[ BMWブランドヒストリー 03 ]

BMWは変化を好む。
2001 - 未来へ

カーライフの多様化など、自動車業界は大きな転換点を迎えています。BMWもまた、ブランドとしても、ディーラーとしても変わりつつあります。

初代MINIの登場はBMWのラインナップ拡大の先駆けともなった。
生き残りをかけた再編はディーラーにも波及した。
2007年に移転したBMW Group Japan本社。カフェも一階に併設されている。

新たな価値の創生

1990年代後半の世界的な自動車業界再編の余波はBMWにも深い爪痕を残す。規模の拡大を狙って買収したローバー・グループの内情は思っていた以上に悪く、BMWは戦略の見直しを余儀なくされた。

結果、BMWは2000年にMINIとランドローバーを除くローバー・グループの全設備とブランドを売却。続く同年10月には、ランドローバーも手放した。BMWでもSUV開発が進行していたため、カテゴリーが近いランドローバーは不要との判断だった。

唯一残したMINIにBMWは大きな可能性を見ていた。当時、車に対する価値観は多様化しつつあり、高級車を嗜好する顧客もまたセダンやクーペばかりを選ぶ時代ではなくなっていた。気軽に乗れるスモール・カーは、注目されるカテゴリーのひとつで、その点、MINIは設計こそ古いものの、スモール・カー市場で世界的に根強い人気を誇っていた。スポーティな車としてのイメージも申し分ない。

2001年、BMWの先進技術がおごられた新生MINIが登場。車両の出来のみならず、MINIが本来持っていたファッショナブルでエキサイティングなイメージを強調したブランド戦略も相まって大ヒット。高級ブランドがつくるスモール・カー、プレミアム・スモールという新たなカテゴリーを確立するに至った。

21世紀のディーラー再編

国内のディーラーも、この時期の経営は全体的に安定。バブル崩壊と自動車業界再編という怒涛の1990年代を乗り越えた甲斐もあり、販売台数も堅調に推移していた。

ところが、2007年に事態は一変する。アメリカのサブプライムローン問題の影響が全世界に広がり、日本もまた深刻な不況へ陥る。加えて決定的だったのが、翌年のリーマンショックだ。世界的な金融不安、深刻な不況により、ディーラーを運営する企業も苦戦を強いられた。

明暗を分けたのは、ひとえに顧客満足度だった。立ち直った正規ディーラーは、ただ車両を提供するだけでなく、顧客が満足する接客やサポートを心得ており、信頼を積み上げていく日本型の自動車ディーラーの在り方をよく理解していた。

そこでBMWの日本法人「ビー・エム・ダブリュー株式会社」は基幹事業として自動車販売業を営む日本企業の参画を募る、新たなディーラー・ネットワーク拡大戦略を策定。2010年代には古くから輸入車ディーラーや国産ディーラーとして名を馳せていた企業をディーラー・ネットワークに迎え、全国のサービス体制を盤石なものとしていった。

売らない営業の衝撃

販売戦略の面でも変革を必要としていた。社会の格差化が進む中、ハイクラスだけを狙ったターゲッティングでは先細りする。かといって、ミドルクラスを狙おうにも、高級車ブランドという敷居の高さからなかなか来店が見込めない。そうなると、いくら車両のデザインや性能を高め、ショールームを飾り立てても、BMWが持つ魅力を新たに伝える機会は損なわれたままになってしまう。

そこで2014年に導入されたのが「フューチャー・リテール・プロジェクト」だ。顧客が親しみを持ってショールームを訪れ、BMWの走りの興奮をより味わえるようにすることがその骨子だ。

プロジェクトの核となるのは、新設された「プロダクト・ジーニアス」という職種。営業部門に属するが販売は一切行わない。初めてショールームを訪れる顧客をもてなし、ときに車好きの友人のように打ち解けて話すことでBMWの魅力を伝え、試乗を促す。あくまでBMWと顧客のよりよいファースト・コンタクトを演出し、感動体験へ導く役割を担っているのだ。

ディーラーの施設も、常に進化を続けている。2016年お台場にオープンしたBMW Group Tokyo Bayと名付けられたブランド体験施設は27000平方メートルという広大な敷地に、BMWとMINIの世界観を表現したショールームと常時100台の試乗車を用意。駐車場に併設されたドライビング・エリアでは試乗会やドライビング・レクチャーの実施も行われている。「走り」というブランドのぶれない価値をより多くの人々が気軽に味わえるようにしたのだ。

価値の創出という伝統

ラインナップの面でも、BMWは新機軸を築いてきた。2000年代から流行となっていたSUV市場には、2つのアプローチで参入した。一つは、あくまでセダンやクーペの設計を基本として、走破性を高めたスポーツ・アクテイビティ・ビークル(SAV)。もう一つがSAVにクーペの流麗さをプラスしたスポーツ・アクテイビティ・クーペ(SAC)だ。両者とも、BMWらしい走りにSUVの居住性や利便性をプラスすることで新たなファンを増やした。

2004年にはエントリーモデルとして安価な1シリーズを発売。2014年にはMINIの設計を応用したBMW初の前輪駆動ミニバン、2シリーズ・アクティブツアラーを発表するなど、多彩なニーズに応えるラインナップを続々と打ち出し、販売数を増やしていった。その傾向はリーマンショックや東日本大震災で一時的な冷え込みはあったものの、いまもなお続いている。

さらに同年には、環境性能やサスティナビリティを意識した新ブランド「BMW i」を立ち上げる。完全電気自動車「i3」とプラグイン・ハイブリッド・スポーツ・カー「i8」で次世代エネルギー自動車市場の先陣を切っていった。

そして創業100年の節目を迎える2016年。変革する自動車の在り方を見据え、BMWの今後を体現したコンセプト・モデル「VISION NEXT 100」が発表された。近い将来、導入されるとみられている自動運転モードはもちろんのこと、ドライバーがハンドルを握るマニュアルモードも設定。センサーやコネクティビティを活用したアシストを提供することで、安全でエキサイティングなドライビングを楽しめるようにしたもので、「走りが与える感動」にこだわる姿勢を明確にした。

核となる価値を保ちつつも、変革を続けるBMW。次の100年でどのような躍進をみせていくのだろうか。それはこれからのブランドを担うメーカーやディーラーのスタッフの手にかかっている。

BMW Tokyo Bay開設初日には創業100周年記念イベントも行われた。
エコにスポーティさを加え、独自の価値を作り出したiブランド。
走りにこだわるBMWの未来への答え「VISION NEXT 100」。
up